娘の置き土産

 娘の置き土産
  我が家は子供二人の4人家族、娘は倅がアメリカに留学した折り、現地の親友となった彼の元へ嫁いで行きました。
 今は妻と二人のんびり過ごす中、訪問客と言えば、せいぜい宅急便のお兄さんが来るぐらいですが、それでも桃の花が咲く頃には子供たちの健康を思い、今でも毎年玄関にお雛様をお迎えしています。
 そんな節句のある日の事・・・
「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴り響き、「どうぞ」と二三度声をかけましたが、何故かドアを開ける様子もなく不安な面持ちでドアを開けると、私のへその高さぐらいの女の子三人が、驚きと戸惑いの表情を浮かべ私を見上げていました。
 思っても見ない来客に少しの間が開き、まさかとは思いつつも「遊びに来たの?」と聞くと、三人一緒にコクリと頷く、もの静かで小さな小さな訪問客でした。
 老夫婦だけの我が家にどうしてだろう?ふと思い出したのが、娘が結婚する前、東京での仕事を辞め半年ぐらい親子水入らずで過ごした時期、我が家の庭先で遊んでいた子供達を見た娘が、家に招いたエピソードを思い出しました。
 雛壇の前で記念写真を撮り、それぞれの小さな手に雛あられを握りしめ帰って行く姿は、まるで三人官女のように娘が招いてくれた、嬉しい花祭りの置き土産でした。
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